「日本の宇宙開発 これでいいのか、21世紀への挑戦」檜山雅春
約30年前の書物です。内容はかなり古いです。
重要度:★☆☆☆☆
- 作者: 桧山雅春
- 出版社/メーカー: ビジネス社
- 発売日: 1986/11
- メディア: 単行本
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いいなと思った箇所
- 1980年代の時代状況を色濃く反映した内容。
ソ連が鉄のカーテンの向こう側で何をやっているのか全くわからない、という雰囲気が非常に良い。ここまで巨大で圧倒的だと思っていたソ連がものの数年後に崩壊するのだから、当時の人々の驚きたるや、想像に難くない。
- インテルサットに関する言及があった事。
「国際通信衛星はインテルサットによって開花し、実を結んだ。インテルサットの先駆者としての苦労があってはじめて、今日の衛星通信実用化時代がやってきたといえる。しかい、インテルサットが寡占体制をとりつづけて、排他性をもちはじめると、今後の国際通信の健全な発達に支障をきたす恐れが出てくる。・・・この大きな時代の流れに逆らう発想がインテルサットに見られはじめたが、決して適当とは思われない。」8.通信と宇宙(p167〜168)
拙卒論で言及予定のインテルサットに関する当時の感想は少し重要かなと思った。
- 1980年代中盤の段階で衛星産業に関しては絶望的だ、と明確に述べている点
”国際商品としての通信衛星の製造と打ち上げについては、…米国とヨーロッパによる寡占体制が既に出来上がってしまっているように感じられる。将来、機能・性能あるいは価格の面で、米国やヨーロパに対抗して、途上国等に対して日本製通信衛星を売りまくるということができる時代が訪れるだろうか。残念ながら、日本製自動車が世界に進出したように、日本製通信衛星が世界中で使われるようには21世紀になってもなりそうにない。”p238
他の部分ではかなり楽観的に日本の将来の宇宙産業について述べられているが、バブル以前から衛星に関してはこの有り様だったのか、と少し意外だった。
- 軽妙な語り口
いいのか悪いのか分かりませんけど、読みやすいといえば読みやすいです
悪かった点
- 誤報
「大韓航空機はアンカレッジを飛び立って日本に向かった。」p261
GPSの重要性を訴える為の前文だったのだが、事件が起きたのは1983年でありこの文章の2年前程度である。まあ年代が近すぎて逆に情報が錯綜していたのかも知れませんが。
ただ、誤報タイポはこの箇所だけでなく、かなりあやふやで引用無しの情報や、なかでも誤植がかなり目立つ。この段階でこの本に感する信頼性は、もはやどこにでもいる宇宙マニアオッサンのうんちく、程度である。
- 全体的に偉そうで読んでいてムカつく
この点が最悪でした。著者は己の立場をほとんど明記せずに社会のあらゆる場面における宇宙利用の可能性を大口をたたいて述べているが、一体何様のつもりなのか。まことに信ぴょう性の低い記述の仕方である。ちなみに、あとがきもなく、終章となった宇宙と法律に意味不明な提言をして突然筆を絶っている。
全体を通じた「〜であろう」「〜すべきだ」「〜なろう」のフレーズが非常に鼻につく。前後にほとんど引用を含む根拠が示されていないからだ。非常に胡散臭い。
以上、宇宙を学ぶ上では読む必要の全く無い書物でした。